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お知らせ

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2018.02.09

未分類(刺繍職人日記)

【ミシン刺繍の豪奢な打敷】

夕方、仕事を終えて外に出ると、そう遅い時間でもないの
に真っ暗だった冬が少しずつ遠ざかる気配が感じられる季節になりました。

まだ残る明るさの余韻を感じ春が近づいてきているのだなと、
あちこちの裸木に先触れが咲いてやいまいかと探しながら歩いています。

今はもう終わりはじめていますが、ささやかなあまい香りのする蝋梅を見かけました。
これが散ると沈丁花、沈丁花が勢いをなくすと梅の花でしょうか。花見が楽しみです。

 

先週末には節分がありました。恵方巻きはお召し上がりになりましたか?
節分の翌日が立春にあたり、暦の上では春に…などと言われることも多いですね。

日が落ちるのが早かった冬が遠のきはじめているのを感じつつ、
現代人の言う【春】はなんとなく狭義ではないかと考えたりしています。

日が昇るころ起き出し、日が沈むころには寝むような時代に生きた人々にとっての春は、
冬の明けきったうららかで暖かい特定の時季ではなく、寒さ僅かに緩み、
日が暮れるのが少しずつ遅くなり新芽の芽吹く気配が辛うじて感じとれる今時季から
ようやく桜が咲き散るまでのことなのじゃないかと思うのです。

厳めしい冬がほころびはじめるとあちこちで桜が爛漫と咲くのを心待ちにしがちですが、
冬と春とが混ざりあう曖昧さのある時季の方が
より日本的で情緒が感じられるような気がしています。

 

さて、そんな工房で最近手掛けた打敷をご紹介いたします。どーん!



どどーん!


いかがでしょうか?

ミシン刺繍がとっても美しく、見事で豪華絢爛な打敷です。
花弁や木の葉のグラデーションのなめらかさといったら!

わたくしどもは手刺繍の職人で、ミシン刺繍は門外漢ではありますが、
この刺繍を施したミシン刺繍職人の精細な技術力の高さに舌を巻くほかありません。

汚れも傷みもないものですが、ご寺院さまが現在お持ちの卓の大きさにぴったり合うように、
打敷の雰囲気を損なわぬよう大きさだけを変更して欲しいとのご依頼を頂戴いたしました。







打敷の大きさや、地色や布種の変更などは弊社の【載せ替え】が最適です。

今回のご依頼では刺繍部分にはほぼ手を加えておりませんが、【載せ替え】を行うことによって、
それぞれの刺繍の状態に最も適した方法や技術で修復、復元や補整を施し、
見違えるほど美しく蘇る打敷が多々ございます。

図案によっては補整過程で配置を見直し、より美しく見えるよう高さを揃えたり隙間を整えたりと
調整を行なうことができますし、もとの刺繍の雰囲気に合わせて新しく花弁や波や模様を
刺し足し華やかさを増したり、決定的なダメージを負う前の予防的修理修復など、
一点ずつに合わせたオーダーメイドのお直しを承っております。

こういうふうにできないだろうかといったご希望に応えるため、
また寄せられるご期待をよい方へ裏切って驚き喜んでいただけるように、
職人一同常に一針入魂で精進しながら、まだ見ぬ打敷との出会いを楽しみにしております。

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