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お知らせ

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2017.12.25

未分類(刺繍職人日記)

【二人天人の打敷】

こんにちは、12月後半にしては寒さがまだ優しい気がするなあと思っていた矢先、
今朝はあちこちの車が一斉に霜化粧をしていました。

弊社工房のある京都府伏見区ではまだ雪が降っているのは見られておりませんが、
そろそろかなあと空を見上げる毎日です。
日が暮れるのも驚くほど早く、年末ということもあり何はなくとも気忙しいですね。

ますます寒さ厳しくなりゆく季節ですが、
暖かくして風邪など召されませんよう恙無くお過ごしください。

 

さて、刺繍職人日記はこちらが年内最後の更新です。





濃色の色糸が消失し、あちこちほつれていた古い打敷を載せ替えいたしました。

生地種と生地色の変更をし、綴じ糸が弱り取れてばらけていたりなくなってしまっていた
金糸の散雲はもとの針跡と生地に残る退色跡から図案を書き出しました。

向かって右の天人に纏わる散雲は全体のバランスを取るため形や位置を変更しています。
朱色地にある刺繍は華やかですが、
濃紺地に刺繍があるものは落ち着いて品があるように感じられます。

生地のお色変更はがらりと印象が変わるので、ひときわ完成を楽しみに作業にあたっていました。



眉毛も髪とともになくなってしまっていましたが、針跡を辿って刺し直しました。
心なしか生き生きと瑞々しい表情になったように思われます。

表情を大きく左右する眉毛を刺すのが、実は一番緊張します。
弊社でお預かりする打敷のほとんどは糸自体が経年により弱っているので、
新品の糸で刺したお顔の時のようにやり直しができないのです。
弱った糸の上から針を通すのはそれ自体がダメージに繋がるので、どの細さの針を使うか、
使う糸の太さは適切かどうか等々、目の前の刺繍と向き合い、
よく観察し最もよいと思われる選択と処置をいたします。

必要最低限に、かつ最も美しい仕上がりになるよう、悩み考え、
ひと針ひと針に集中して大事に刺しています。

髪はもともとは絹の平糸のみで刺してあったようなのですが、強度と耐久性を持たせるため、
平糸で刺してから細い撚り糸で上からもう一度刺しました。

後のことを見据えた工夫を施すことができるのも、載せ替えの強みだと考えております。

◇◆◇



 

2017年も残すところあとわずか。
本年も皆様のご愛顧により支えられた一年でございました。
この場をおかりいたしまして、厚く御礼申し上げます。

来たる2018年も、ご寺院様の想いを大切に、
心を込めた丁寧な手仕事をお届けできるよう、職人一丸となり精進してまいります。
来年も引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

よいお年をお迎えくださいませ。

株式会社和光舎
刺繍修復工房職人一同

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